ピザ屋、山、民家・・・アメリカのリアルなライブ事情を生体験レポート!2017年8月15日

アメリカのライブ事情

スポットライトを浴びて観客の前で自分達の音楽を演奏する。そして自分達が奏でる音楽に身を委ねて体を動かす観客達。演奏の熱量も増していき、会場が一体化する。「ライブ」とはそんな素敵な場ですよね。そんなバンド活動の醍醐味の一つであるライブですが、日本だけでなく海外でもライブをしたい!と考える人は少なくないのではないでしょうか?

ちなみに皆さんは海外でのライブについて、どんなイメージがありますか?
「観客のノリが良い」、「移動距離が長くて辛い」、「入国審査が厳しい」といった話を聞いたことがある人もいるかもしれません。そこで今回は僕自身が経験した海外ライブでの体験談をお話するので、海外でライブをすることに興味がある人は参考にしていただければと思います。

1: 自己紹介
2: 海外でライブをする2つの方法
	2.1: プロモーター/イベンターに声を掛けてもらう
	2.2: 自分でブッキングする
	2.3: どちらがオススメ?
3: 海外のライブで戸惑うこと
	3.1: 機材の手配と入国審査の意外な関係
	3.2: PAに頼れない環境も多々あり
	3.3: リハがまったくない
4: ライブ体験レポート
	4.1: レポートその①〜ピザ屋レストランの二階にてデスメタルイベント〜
		4.1.1: 機材は全て持ち込み
		4.1.2: ライブの感想
	4.2: レポートその②〜山の中で行われるメタルフェス〜
		4.2.1: 出演バンドは13バンド。転換スピードが命!
		4.2.2: iPadでミキシング?意外にハイテクなPA
		4.2.3: 使用機材について
		4.2.4: ライブの感想
	4.3: レポートその③〜酸欠必至!民家での爆音ライブ!
		4.3.1: 民家でのライブってどんな感じ?
		4.3.2:ライブの感想
5: まとめ

自己紹介

それではまず詳しい内容に入る前に、自己紹介をさせてください。

私は”Death I Am”というバンドのドラムを叩くKazでして、Death I Amは2枚のフルアルバムをリリースしているデスメタルバンドです。


Death I Am – Calculating Fate (MV)

Death I Am Official Website

過去にはJob For A Cowboy, Destrage, Crossfaith, Nocturnal Bloodlust, といったバンド達との対バン実績も持ちます。

Death I Amはボーカリストがアメリカ人でカリフォルニアに住んでいるため、年に一度彼を日本に呼び、数週間の滞在期間中にまとめていくつかのライブを行う活動形式を取ってきました。

しかし今回ははじめて日本のメンバーがアメリカに赴き、アメリカでライブをやる、という計画を立てたのです。

今回紹介する内容はこのアメリカツアーで体験した内容になるので、海外でも特にアメリカでのライブを考えている人には参考になるかもしれません。

海外でライブをする2つの方法

海外でライブ

それでは本題に入りますが、まず海外でライブを行うには大きく二つの方法があることを理解しておいた方がよいでしょう。というのも、この二つにはそれぞれメリットとデメリットがあるので、どちらの方法が自分のバンドに合うか知っておけば後々きっと役にたつはずです。

プロモーター/イベンターに声を掛けてもらう

まず一つ目が「プロモーター/イベンターに声を掛けてもらう」という方法。もしかするとバンドマンの多くが思い描く「海外でのライブ」はこれに当てはまるかもしれません。この形で海外でライブをするメリットは、有名なバンドと一緒にライブをできることであったり、場合によってはツアーバスに乗ったり、大きな会場で楽屋が割り当てられたりして、「本格的」なツアー体験ができることでしょう。
逆にデメリットとして挙げられるのは、そもそもこういった形で海外でライブをできるバンドは少なく、実現することが難しいという点。実現のハードルが高い海外でのライブのやり方といえるでしょう。

自分でブッキングする

そして、もう一つの方法が「自分でブッキングする」という方法。ちなみに今回我々はこの方法でアメリカでライブを行いました。

アメリカに行きたいタイミングでのオファーがなかったという実状もありますが、アメリカ人のボーカリストがアメリカにいて、現地でのコネクションもあったので、自分達でライブをブッキングして、自分達の好きな日程を組むのがよいのでは、という結論に至り自分達でブッキングする方法を選んだのです。自分達でライブをブッキングする場合、プロモーターやイベンターが企画するような大きなイベントに参加することはなかなか難しく、好きなバンドのドキュメンタリーで描かれるようなツアー体験とは違い、若干地味で小規模なツアー体験になります。

でも、好きなバンド達も皆最初はこうした小規模なツアーからはじめている訳ですし、これはこれで貴重な体験です。また大きなイベントと違い、小さなイベントでは観客と直に接することができるので、現地のリアルな空気感を感じることができるのもメリットと言えるでしょう。

どちらがオススメ?

海外でライブを行う二つの方法を紹介しましたが、あなたのバンドにはどちらの方法が合いそうですか?
プロモーター/イベンターに声を掛けてもらう方が理想的かもしれませんが、現実的に難しい場合は自分でブッキングする形になるでしょう。しかし自分でブッキングするのも、現地にコネクションがなければ難しいもの。もし、ライブをしたい国や地域が決まっているのであれば、インターネット通じて友達を作ったり、あるいは観光で訪れて現地のメタルイベントに観客として参加して出演する現地のバンドと仲良くなってコネクションを作る、という方法もオススメです。

海外のライブで戸惑うこと

次にお話するのは「海外のライブで戸惑うこと」。日本語が通じないことはもちろん、食べ物も違いますし、気候も異なり、生活環境がまるで違うのはもちろんですが、ライブに関わる面での戸惑いをご紹介します。

機材の手配と入国審査の意外な関係性

バンドのライブといえば必要なのが楽器。バンドの場合はアンプやドラムなど重量が重いものが多く、すべて日本から海外に持っていくと相当なコストになります。仮にコストをカバーできたとしても厄介なのが入国審査。詳しい事情は便宜上省きますがアメリカの場合、収益が生まれるイベントに参加する場合は観光ビザではなく、特定のビザが必要になるとのこと。特に近年この取り締まりが強くなっており、知人のバンドはアメリカに着いた後に入国審査で事情がバレてしまい、強制的に帰国になったケースもありました。

ここでバレてしまう理由の一つとして挙げられるのが「楽器」です。アコースティックギター一本程度なら、「滞在先で趣味で弾くため」という理由で入国審査を通ることができるでしょうが、バンドのように何人ものメンバーがたくさんの機材を持ち運んでいたら趣味レベルではないことは明らか。そのため弦楽器隊は予め滞在先に楽器本体を郵送しておき、ドラムは基本的にスティック以外は現地で手配することがお勧めです。(実際のところ私はスティックとトリガー用のモジュールのみ持参しました)

PAに頼れない場面も多々あり

日本のライブハウスの場合、ベテランバンドも新しいバンドも同等のPAサービスが提供されますよね。しかし海外での小規模なライブの場合は違うケースが多いです。PA用のスピーカーはあっても、弦楽器隊はそれぞれのアンプからの音、そしてドラムは生音のみ、PAから出るのはボーカルだけ、なんていう場合もあります。

メタル系のイベントの場合、バスドラムをマイキングする場合もありますが、それでも日本のライブハウスのPAのようにしっかりと作り込んだ音は出ません。なので音量面でPAに頼ることができず、素の実力が試されるといえるでしょう。

リハがまったくない

個人的に一番のハードルだったのがこれ。
日本では日中に全バンドのリハ、サウンドチェックが行われますが、海外のイベントでは相当大きなイベントでない限り、リハやサウンドチェックはないと考えた方がよいでしょう。楽屋がない場合、ウォーミングアップする場もないので、セットアップしたら文字通りぶっつけ本番です。なのでライブの一曲目はメンバー全員がウォーミングアップとして演奏できる内容の曲を選ぶのが無難でしょう。

ライブ体験レポート

「海外でライブをする2つの方法」、そして「海外のライブで戸惑うこと」を紹介しましたが、次は実際のライブ体験をお話します。今回私は3回ライブを行ったのですが、どれも日本にはないユニークなイベントでした。ちなみにスケジュールは2017年7月26日(水)、7月29日(土)、7月30日(日)という具合で最後の二回は連日なので移動時間を含め若干不安がありましたがなんとかなりました。

ライブ体験レポートその①〜ピザ屋レストランの二階にてデスメタルイベント〜

ピザ屋レストランでデスメタルイベント ピザ屋さんのFacebookページより

まず一つ目がピザ屋レストランの二階でのデスメタルイベント。普段はこのように食事をするテーブルや、ビリヤード台やアーケートゲームが並んでいます。

Firehouse Pizza Restaurantさんの投稿 2013年11月8日

ところがイベント時はそれを全てどけてイベントスペースになるのです。

ピザ屋でライブの様子

機材は全て持ち込み

本来はピザ屋さんのこの会場。ライブハウスではないのでドラムセットはもちろんのこと、PAもアンプも元々はありません。そのためイベントを行う時はバンドが必要な機材を全て持参します。

ピザ屋ライブ:セッティングの様子

モニタースピーカーの様子

LANEYのアンプヘッド Laney IRT120H

PEAVYのアンプヘッド PEAVEY VB-2

LINE6のアンプヘッド

またこのイベントの場合PAから出る音は、ボーカルマイク、スネア、バスドラのトリガー音の三つのみ。結局のところ我々は、ギターリストは自前の対バンするバンドのギタリストのアンプであるLaney IRT120Hを使用し、私はPearl製のドラムセットを使用しました。

ライブの感想

アメリカでの初ライブということもあって、冒頭で紹介した「海外のライブで戸惑うこと」をモロに感じてのライブでした。
特にドラムセットの持ち主は身長が高く、セット全体が高く設定されており、スネアスタンドに至っては一定以下に低くできないカスタマイズが施されており、低めに設定したい自分にとってはとても叩きにくいセッティングだったのです。とはいえ、やってみると意外にどうにかなるもので、録画した演奏を確認したところ上々の出来栄えでした。また評判通り海外の観客はノリがよく、終始ウェルカムな雰囲気で気持ちよく演奏することができました。

ライブ体験レポートその②〜山の中で行われるメタルフェス〜

山の中で行われるメタルフェス

続いて出演したのが山の中で行われるメタルフェスである”Metal In The Mountain”。このイベントは今年で5年目の開催を迎え、毎年規模が大きくなっているとのこと。メタルファンにとって嬉しいだけでなく、会場周辺の経済効果もあるとのことで、北カリフォルニアを代表するローカルフェスの一つとなっているようです。

出演バンドは13バンド。転換スピードが命!

メタルフェスのフライヤー
(オフィシャルフライヤー)

本フェスは13バンドが出演するフェスなので、とにかく転換時間にシビア。フェス前に何度も転換時に関する連絡が届き、特にドラマーは予めできるだけの機材を調整済みの上でステージ上に運ぶように、という趣旨の連絡が届いていまいた。持ち時間は約30分と日本のイベントとさほど変わりない感じですが、山の中で空気が薄いことも考え我々は一曲減らしたセットリストで臨みました。

iPadでミキシング?意外にハイテクなPA

山メタルフェスの様子

フェスでは通常、ステージから大分離れた客席中央にPAのブースが設けられるもの。ところがこのフェスの場合、なんとPAのブースがステージの真横にセットされていました。しあもほとんど人がブースに人がおらず、自分の出番になって知ったのですが、PAのミキシングはiPadを持った担当者が客席を歩き回りながら行っていたのです。これなら複数箇所からPAの具合が確認できますし、なかなか優れたシステムだなと感心しました。

使用機材について

そして肝となる使用機材ですが、今回は前回とは違うバンドの機材を借りることに。

Peavey 6505+ Peavey 6505+

Mesa Boogie Dual Rectifier Mesa Boogie Dual Rectifier

ギターはPeavyの6505+とMesa BoogieのDual Rectifierをステレオ出力して使用、ドラムはPDP社のM5シリーズを使用しました。

森の中のドラム

ドラムに関してはセットアップが私にちょうど良い具合で抜群の叩きやすさ。シンバル類も充実していて、日本でのライブ時とさほど変わりない具合でプレイすることができました。また前回のライブでは私が苦手意識のあるペダルだったのに対して、この日は癖の少ない素直なアクションが特徴のDWの2000シリーズ。

森の中のツインペダル

機材を貸してもらったバンドとは次の日のライブでも共演する予定だったので、次の日も貸してもらえるという約束を取り付けて一安心。

ライブの感想

山フェスの模様

森の中で13のメタルバンドが爆音で終日ライブを繰り広げるMetal In The Mountainですが、緑の中でのライブは格別に気持ちよかったです。私は屋外でのライブ自体はじめての体験だったのですが、森の澄んだ空気が心地よく、いままで一番気持ちの良いライブとなりました。またこの時は観衆も多く、アメリカらしくノリが良くて終始モッシュが絶えず、この点も気持ちよかったですね。またPAのクオリティもよく、出音もよかったと評判上々でした。

ライブ体験レポートその③〜酸欠必至!民家での爆音ライブ!

民家でライブ

そして迎えたライブ最終日ですが、最後のライブはなんと一般民家でのイベントとのこと。一般民家といっても大分山奥の地域なので、日本で例えるなら田んぼのど真ん中にある家の倉庫でのライブ、といったところでしょうか。ですが日本でそんなところでライブをしても、人は集まらないもの。こういった場所でもイベントが成り立つのがアメリカの醍醐味の一つかもしれません。

民家でのライブってどんな感じ?

民家でライブ:機材セッティング

僕自身、民家でのライブははじめてでしたが、とにかく暑い。
エアコンが壊れていてただでさえ暑いのに、10畳ほどのリビングのスペースに何十人もの人が集まり暴れるのですから酸欠必至。またPAに関しては日本でいうスタジオ内での演奏に近い形なので、PAは基本ボーカルのみ。バンドによってはバスドラムをマイキングしたり、トリガー音をPAから出していたりしていました。

ライブの感想

民家でライブの模様

Metal In The Mountainが人生で一番気持ちよかったライブでしたが、この民家でのライブは人生で一番アツかったライブとなりました。曲のとあるパートでヘッドバンギングをした後、意識が遠のいて自分がどこで何をしているのか一瞬わからなくなるほど。ギタリスト曰く、意識を失いそうになるので終盤はヘッドバンギングをしないようにしていたとのこと。これだけの濃い空間ですが観客も盛り上がって暴れまくり、常時酸欠の状態でしたが、とても良い思い出となりました。

まとめ

以上、「海外でのライブ」というテーマの基、私自身が体験したアメリカでのライブ・ツアー体験をお話しました。

アメリカに関して一つ注意すべきは入国審査の厳しさ。機材を手で持ち運ぶのは「私はアメリカにライブしにいきますよ」と言っているも同然なので注意しましょう。なお、これはアメリカ以外でもありえる話しなので、海外でのライブを考えている人は取得すべきビザについて十二分に調べることをお勧めします。(あるいは我々のように観光客を装っていく場合もありますが、その場合は手荷物に気をつけてください)

日本はライブハウスでのライブがほとんどかと思いますが、アメリカはイベントの幅が広く、日本のライブハウスのような会場でのイベントもあれば民家でのライブ、屋外でのライブ、またレストランのような会場でのライブもごく普通に行われているようです。

以上となりますが海外でのライブを考えている人の参考になれば幸いです。

ライター:Kaz Niita

日米混合メタルバンド"Death I Am"のドラマー。 1989年10月9日アメリカ・オハイオ州生まれ。 ライターとして活動する傍、自身のブログではDeath I Amを中心に音楽活動に関する情報をはじめ、DTM関連情報、私生活、欧米の情報網から入手したアーティストのインタビュー情報など発信しています。

Death I Amオフィシャルサイト:http://deathiam.com/
オフィシャルブログ:http://www.kazallica.com/

最終更新日 : 2017/08/17

記事カテゴリ:コラム