Freedom CGR:オリジナルベースの新機種 Dulake Libero/Dulake Flat インタビュー[記事公開日]2016年6月18日
[最終更新日]2017年11月30日

Dulake Libero&Dulake Flat 上:Dulake Libro、下:Dulake Flat

東京・町屋に工房を構える Freedom Custom Guitar Research(フリーダムカスタムギターリサーチ:以下Freedom CGR)。魅力的かつハイエンドなオリジナルギター/ベースを生み出しているブランドですが、2016年3月に同社のオリジナルベース「Dulake」シリーズの新機種として「Dulake Libero」と「Dulake Flat」の2機種がラインナップされました。

Dulake Libero / Dulake Flat

freedom-dulake
カーブドボディの Dulake

ボディにラインが入っていない Dulake Libero、ラインが入っている Dulake Flat というモデルですが、共通して

  • Dulake がカーブドボディだったのに対して Dulake Flat / Dulake Libero 共にフラットトップ(ボディー)
  • オリジナル・ステンレス製フレット(SPEEDY/WARM)
  • ARIMIZO ジョイントプレート:ブラス製(ライト・アッシュ)、アルミ製(アルダー)
  • ピックアップ:オリジナル・ハムバッカー2基
  • プリアンプ:オリジナル・プリアンプ(パッシブへの切り替えも可能)
  • コントロール:2ボリューム/1トーン(プッシュ=アクティブ/プル=パッシブ)/トレブル/ベース
  • Bridge:GOTOH 404BO
  • 4,5弦のラインナップ

というスペックになっています。

Dulake Libero

Dulake Libero

Dulake Libero は、従来のモデルにはなかったオリジナルデザインのピックガードを装備したソリッドボディのモデル。

  • ボディ材:アルダー2ピース/ライト・アッシュ2ピース
  • ネック:メイプル1ピース、34インチ・スケール(864mm)
  • 指板:ローズウッド/メイプル、24F、400R

となっています。

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Dulake Flat

Dulake Flat

Dulake Flat は、フィギュアド・メイプルによる高級感溢れる印象、ボディが3層の木材を組み合わせているなど Libero に比べてボディ材と構造が異なっています。ボディのコンター加工によってラインが引かれたようにウェンジ材が顔を覗かせているのが特徴で、ピックガードは標準搭載されません(装着の選択も可能)。

  • ボディ:【TOP】フィギュアド・メイプル w/ウェンジ
  • ボディ:【BACK】アルダー2ピース/ライト・アッシュ2ピース

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Dulake Libero / Dulake Flat について、インタビュー!

今回Supernice!スタッフが Freedom CGR のショールームを訪問、Dulake Libero / Dulake Flat について、代表の深野真さん、営業の小野さんにインタビューさせていただきました。

デザインコンセプト:恐竜が四つ足で這っているようなイメージ

── Dulake は想像の恐竜をコンセプトにしたデザインとのことですが、どのように製作を進めて行ったかお聞かせ下さい。

深野 真さん(以下、敬称略) 元々、4弦、5弦、6弦を作るという頭でこのベースはデザイニングされているので、デザイニングの元は5弦でデザインしているんですよ。5弦でデザインすることで、ほぼ同一のデザインで、6弦にも4弦にも派生ができるということを考えたんですね。4弦を主体にデザイニングした場合だと、6弦を作った場合に、デザイニングが絶対崩れてしまうんですよ。どうしても。それが嫌で、このベースは一番最初にデザインする時から5弦を最初に考えて、4弦にも6弦にも派生できるようにしているんです。このベースはそういう意味では、5弦スペシャルのデザインだと考えて良いかもしれません。

そして、このベースに関しては社内コンペをして決めたデザインなんです。その時にまずやったのって、ボディデザインなんですよ。まずは新しいベースっていうところで、コンセプトや方向を一応決めた上で、5弦ベースっていうところで、ボディのデザインを各員出して持ち寄って、様々な意見が飛び交って最終的に決まりました。その後に行ったのがヘッドデザインです。そもそもこのベースって、ボディのデザイナーとヘッドのデザイナーが別の人なんです。

──それは面白いですね。

深野 真 面白いでしょ?(笑)。製作段階の Dulake のボディをずっと眺めているうちに、恐竜が四つ足でいるような、ちょっと鈍重な風に見えた訳です。その後、ボディからこのヘッドを想像して、尚且つこのヘッドをデザインした人間が「Dulake」ってう名前を名付けたんです。ヘッドデザインした人間がこのボディからインスパイアしてこのヘッドを作り、そのまま名前も作るっていう。だから、ボディデザインありきで出てきた名前ではありますね。

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Dulake Libero のヘッド

サウンドのイメージ

──サウンドのイメージはどのように作っていったのでしょうか?

深野 真 コンセプトを決める段階でサウンドのイメージや機能、ルックスは決めてあるんです。とはいえ、決まってると言っても、あくまでイメージや方向性だけですが。元々うちはフェンダー系のコピーのベースを作っていて、オリジナルモデルは無かったんです。当時、初となるオリジナルベースを作るにあたって、ポイントとしてはローチューンでの音の捌きに注目しました。

ラウドなサウンドを出してもしっかりと“音程感がある”。その点を意識しました。
音色、音像に関してはビンテージ・フェンダー等とはある意味対極にある、コンテンポラリーな方向性を持つコンパクトボディタイプのベースの特徴といえる、倍音を抑え込んだタイトなサウンドを目指し、そこを構築してから逆にフェンダー側に寄せた Dulake Flat や Dulake Libero を開発し展開するという。
ローの、そしてローチューンの音程感と音の捌きをしっかりする。基本のサウンドはパッシブを主軸とし、それでいてタイトで、自由度の高いサウンドを追求して出来たものが Dulake となります。

ヘッドの継ぎ


厚みのあるヘッドを採用している

深野 真 ヘッドの継ぎは Dulake の大きな特徴なんですけど、このヘッドを見て頂くと分かるのですが結構角度が付いているんですよ。そしてネックには メイプル材を使用していますが、継ぎ方はスカーフジョイント等では無くて、ナット下まで完全にメイプル1ピース構造となっています。これにより Fender ライクなサウンドのニュアンスが出せるようになっています。

ヘッドにはしっかりとした厚みを持たせることで剛性が高まり、結果的にしっかりとしたローとサスティンを得ることができます。

イメージを喚起させるカラーリング名

──Dulake Libero / Dulake Flat いずれもボディのカラーリングが美しいと思いました。Freedom CGR のギターはボディカラーの名前がすごくユニークだなと思っていて、これは他のモデルの話でもあるのですが、瑠璃(るり)とか、茜雲(あかねぐも)とか、今日あまり会話の中で出てこないような言葉ですよね。そういうのは、どこから思いつくのでしょうか?

深野 真 ボディカラーは全部うちの工場長兼塗装担当である船越が考えています。テーマは一切決まってなく Freedom、その時に気になっている言葉、物事、 思い出等々様々な点からインスパイアされたカラーを、っていうような。例えば、ユニークなカラーネームでいえば「0:00」とか、「17:40」、「17:20」というのがありますね。あれは(ショールーム内のギターを指さす)「5:00」。この「5:00」は三月くらいの早朝の雰囲気をイメージしたカラーです。空が赤くなる前というか。
船越は自由に、妄想や想像から色を創造しているので。他にも夕焼け番長というカラーがあって、船越に「これは夕焼け番長なの?夕焼けじゃないの?」と聞いても「いえ、夕焼け”番長”です」と。そこには絶対に譲れない世界観があるわけです。

──笑、そこまでイメージされているんですね。では工場長が FreedomCGR の オリジナルカラーを生み出しているんですね。

深野 真 そうですね。でも、面白いですよ。そういう一捻りするのが大好きというか。基本妄想から入る感じです。

dulake libero:ボディ
Dulake Libero のボディ

特許取得した ARIMIZO & One Point Joint

Alimizo One Point Joint
特許取得した ARIMIZO & One Point Joint

──特許を取得された ARIMIZO & One Point Joint ですが、エレキベースに採用することで、やはり音は変わるものなのでしょうか?やはりタイトになるものでしょうか?

深野 真 そうですね。もちろんギターにも採用されていますし、音の変化は当然ありますが、ベースの方が音の違いが分かりやすいと思います。ただ、生鳴りを可変し音色を変化させるという方向性は一緒です。

ARIMIZO & One Point Jointについて詳しく – エレキギター博士

Alimizoジョイント・プレートの素材
左側がブラス製プレート、右側がアルミ製プレート

深野 真 ARIMIZO の裏側のプレートなんですけど、今までは全部ブラス(真鍮)だったのですが、アルダーボディを採用しているものだけはアルミ製になっています。

──ARIMIZO はネジの調節で音が変わるということですが、プレートの素材でもまた音が変わるんですか?

深野 真 変わりますね。結構変わるんですよ。アルミ製ではより Fender っぽいサウンドの方向性になるんです。

──プレートの素材を使い分けたのはDulakeからですか?

深野 真 そうです。ベースとしての低音の捌き方を考慮した場合、今までは全てブラスだったんですけど、アルダーボディの Dulake に関してはアルミの方が優れている点があるなと。ただし、アッシュボディはブラスです。後、見た目に違いがあって、面取りしてあるのがアルミで、していないのがブラスとなっています。うちで管理する時に分からなくなってしまうので(笑)

──なるほど(笑)確かにパッと見ただけでは分からないですね。色も選ぶことができるんですか?

深野 真 そうですね。色もシルバー、ゴールド、ブラック、コスモブラックから自由に選ぶことができるようになっています。

蓄光仕様のサイドポジション


左側が数秒間光を当てた直後、右側が数分後の状態
蓄光素材を使用したサイドポジションマークは、ライブ中の視認性も良く、電気式でないためトラブルの心配もない。

複雑な構造を持つDulake Flat

Dulake Flat:ボディ
Dulake Flat:3層構造のボディ

──この中央に材がラミネートされているのが Dulake Flat ですか?

深野 真 はい。この Dulake Flat は結構複雑な構造をしています。「ウェンジ」という材を効果的に使っているんです。ウェンジは Warwick が有名にしたと思うのですが、これは本当に素晴らしい材ですね。ベースの振動を捌くという点においては。重くて固い、特殊な材料です。しかし、とても澄んで響く感じではありません。エボニーは澄んだ響きを持っていますけど、ウェンジはゴムっぽさというか。ゴィン…っていう響きなんですよ。サステインが良い。ちょっとコンプレッションが掛かっている感じですね。でも、リミッターのようにある帯域から上を全てカットする訳ではなく、超高域もしっかり残っているのが特徴です。そして、ウェンジをラミネートすることで、不要な倍音を抑え込むことができます。同時にラミネートさせる材の構築の仕方で振動の捌き方を変え、フェンダー系に近い倍音感を出すことに成功しました。

さらにこの ARIMIZO & One Point Joint を採用することで、より倍音を含んだフェンダー系のサウンドに変化させることができます。といっても、Warwick と Fender 系の中間くらいの倍音感ですけどね。でも、締め込んでいくとタイトになっていく訳でして。そこらへんを行き来できるのも魅力かと。

あと、Dulake Flat はメイプルトップにウェンジをラミネートさせています。3層構造ですね。生で弾いた時でさえ、感じが違うと思います。重いですよね?

────(持たせてもらう)そうですね、重いです

深野 真 そうですよね。その方が Libero より Dulake っぽくなるので。

ピックアップとコントロール

────ところで、ピックアップはどのようなものを?

深野 真 Dulake シリーズは全部一緒です。ハムバッカーなんですけど、ちょっと構造が変わっています。中身はデュアルコイルで、リバース・スプリット型のポールピース配置となっています。つまり、コイルはダブルコイルなんですけど、音を拾うのはリバース P みたいな状況になっているピックアップが2つ付いている訳ですね。

───ジャズベース(JB)よりかプレジションベース(PB)寄りなのでしょうか?

深野 真 ある意味、構造としてはJBとPBの中間に位置しますね。それのハムバッカー。サウンドの方向性としては、フロント側のピックアップがPBに近く、リア型がJBに近いという感じです。フロント側はどちらかというと、音の芯がゴンっと出る感じよりも、バフっとした感じです。アタックが柔らかめですね。リア側は倍音を多く含んだ、ピッキングニュアンスが出やすいような感じ。このようにそれぞれ音作りをしています。

───プレイスタイルを選ばなそうですね

深野 真 そうですね。コントロールに関しては2ボリュームで、1トーン。それにパッシブとアクティブの切り替えがあります。これはうちのオリジナルベースの特徴なんですけど、どのモデルにもアクティブサーキットが入っているんですよ。でも、開発やプロトタイプでそのモデルの良し悪しを判断する場合、アクティブサーキットは一切使いません。まずはパッシブで自分達が納得する音を出せているか判断し、その上でアクティブ回路を乗せるっていう。なので、パッシブとアクティブを切り替えた時に、大きな音の違いというものはありません。オンにしたからっていきなり音圧が下がるとか、そういうことは無いですね。

ただ、アクティブを入れるということは結果的に電気回路を通る訳でして、少しだけバッファーを噛んでいる状況にはなりますけどね。とはいえ、基本的な音像とか音圧とかは殆ど変わらない形に調整しています。もちろんアクティブらしいサウンドを求めるプレイヤーもいらっしゃるので、そのために本体の裏側を空けると、アクティブ時の音色を調整できるトリマーが付いています。


ボディ裏を開いた様子


内部にはアクティブ時のサウンドを微調整するためのトリマーが用意されてい る。トリマーをいじることで各帯域のフリケンシーやブースト量を調節するこ とができます。より細かい音作りが可能になるとのこと

幅広いジャンルで使える1本に

───Freedom CGRが手がける楽器はスタジオ・ミュージシャンからコンテンポラリーなロック・ミュージシャンまで、音楽ジャンル問わず色々なプレイヤーの方に使われていますよね。

深野 真 そうですね。うちの会社の特徴と言っても良いかもしれませんが。普通はある種、得意なジャンルが限られてしまうと思うのですが、うちの場合はラウド系からジャズ、フュージョン、ポップスなど、幅広いプレイヤーに使われています。一応 Dulake はラウドロックを意識したローチューンを得意とするモデルなのですが、他にもコンテンポラリーなジャズ系などを追いかけられるように、倍音を含んだ Fender っぽいニュアンスも出 せるように仕上げています。

───なるほど。新しい Dulake シリーズはもっと幅広いジャンルで使えそうですよね。

深野 真 そうですね。先ほどお話したように、Flatはウェンジという木材を間に噛ませています。そうすることで、よりタイトでアタック感のあるサウンドになり、ジャズ・フュージョンなどの手数が多いプレイに最適化される訳です。逆にもっとスタンダードなロックやポップスをメイン据えたいなら Fender ライクな倍音を多く含んだ Libero を選ぶと良いでしょうね。

Dulake は今までラウドロックやジャズなどの音楽ジャンルをターゲットにしていましたが、それが Libero と Flat でオールジャンルカバーできるようになったみたいな。新たなDulakeシリーズを開発したことで、対応できる音楽ジャンルの幅は大きく広がったかもしれませんね。Libero と Flat の存在で。

───ありがとうございました!

Freedom Custom Guitar Researchについて – エレキギター博士
究極の一本を作るアプローチを常に探求していく:Freedom CGR訪問インタビュー – エレキギター博士