同価格帯ならウチが最強です:荒井貿易訪問インタビュー[記事公開日]2016年9月11日
[最終更新日]2022年03月31日

荒井貿易インタビュー

愛知県名古屋市に本社を構える荒井貿易株式会社は、Aria Pro IIでエレキギターを、Aria Dreadnought、Elecord、Sinsonidoなど多くのブランドでアコースティックギターをリリースしています。荒井貿易インタビュー「アコースティックギター編」では、エレキギター編と同じく企画課の瀬川哲矢さんと加藤久佳さんのお二人から、製品の特徴や魅力だけでなくブランドを持つ企業の業務内容、またメーカーとの関係など業界の深いお話を伺いました。
※今回は回答者が二人いますが、特に区別する必要のある回答以外は「Aria」の仮名でまとめています。
同価格帯ならウチが最強です:荒井貿易訪問インタビュー 〜エレキギター編〜

荒井貿易は創業者荒井史郎氏がクラシックギターに深く傾倒したこともあり、クラシックギターや譜面の輸入から業績を伸ばしていった歴史があります。本社にはクラシックギター専門のショールームがあり、本人がコーヒーをこぼした跡がまだ残っているという名手セゴビアが実際に愛用したギター、1889年製のトーレス、昭和の名工中出阪蔵氏が荒井氏のために製作したギターなど、ファンなら胸躍らずにはいられない名機が並んでいます。

アリアのアコギを試奏しながら、いろいろなお話を伺いました。

アリアのアコギ試奏

砂による芸術。The Sandpiper「SP-CST」

The Sandpiper「SP-CST」

SP-CST:サウンドホール

──サウンドホールの細かい意匠がとても美しいですね!音もまとまりがあって美しい、素晴らしいギターです。胴の薄さが生きている明瞭なトーンで、高速アルペジオも心地よく響くきれいな粒立ちです。ハイからローまでの出方が素直で聞きやすいですし、インレイワークもきれいですね。

Aria 「The Sandpiper(サンドパイパー)」は工法に由来するモデル名で、海援隊が演奏している写真がカタログで使われました。この特殊な透かし彫りのサウンドホールを「デコレーテッド・サウンドホール」と称していますが、下手するとピックが刺さります(笑)。細かい砂を飛ばして、夏にぐんぐん育った柔らかい部分だけを削り取る技法が使われています。それでいてレース状に彫るだけではなく、冬にゆっくり育った硬質な部分は残しています。この施工は達人の手作業やNCルーターの掘削がいかに精緻でも刃物では不可能で、今のところレーザーを使っても不可能です。
砂との相性がありますから、トップ材は「シダー(杉)」しか使えません。スプルース(松)だと、硬くて砂が弾かれてしまうんです。砂で彫るのは見栄えのためでしたが、音響特性で言うとサウンドホールの穴が大幅に少なくなってハウリングしにくくなりますから、エレアコとして理想的な構造です。
弊社はいろんなメーカーさんと取引させていただいており、得意な分野ごとに依頼をしていますが、このサンドパイパーを作ることができるのは、全国でも1社だけです。高級感はありますが、定価24万円にとどめています。ボディは薄めで小振りに見えますが、バックにアーチが付けられているのでサイズ感以上にしっかり鳴ってくれますよ。

クラギ弾きの憧れ。スペインの「Jose Ramirez(ホセ・ラミレス)」

Jose Ramirez

──せっかくなので、ラミレスも触っていきます!チューニングの音だけでパエリアを食べた気になる感じです!すごくきれいな音ですね!高音から低音まで、音量、音圧が均一、音程しか違わない、強弱や音色はすべてプレイヤーが作る、とても素晴らしい楽器です。

Jose Ramirez:サウンドホール

Jose Ramirez:バック材

Aria この個体は現在販売されているもので、オーソドックスなスタイルの200万円くらいのものです。サイド&バックはマダガスカル・ローズウッド単板です。ボディの大きさや弦長など時代の流行に影響され、いろいろなバリエーションがあります。
最近の意欲作としては、バイオリンのようにトップとバックがサイドからはみ出しているものや、「ダブルトップ」仕様のものもあります。ダブルトップとは間隔をあけたトップ材二枚の間の空間で反響を起こすという構造です。
高額なイメージがありますが、ラミレスでも20万円台からありますよ。 

斬新な発想で生まれた消音ギター「Sinsonido(シンソニード)」

シンソニード

──これは非常に軽いですね!予想以上にコンパクトで軽いです。ヘッドレスデザインが効いているし、生音がものすごく抑えられています。

Aria これはいわゆる消音ギター、Sinsonido(シンソニード)「AS-109S」です。こちらは上位機種で、通常のボリュームとハイ&ローのトーンに加え、リヴァーブとコーラス、デジタルチューナーが付いています。また、ヘッドフォンアウトとAUXインが付いているので、伴奏音源を使いながらヘッドフォンで練習、というような使い方ができます。四角い乾電池だけでなくACアダプターからも電源が取れますから、状況に応じて使い分けて練習できます。コーラスとリヴァーブはかなり分かりやすいかかり方をします。こうした回路を埋め込んでいるため、ボディ内部はほぼ基盤です。バックパネルは木製なので、安っぽい感じには見えないようになっています。
Sinsonidoは、アメリカのソロエッテ社からライセンスを受けて作っています。ピックアップはピエゾとは異なる特別のもので、サドルの土台となるパイプの両端にコンデンサマイクを仕込んでいます。楽器の振動ではなくパイプ内の空気振動を拾いますから、スピーカーから出る音はまさにアコースティックです。

Sinsonido-body フレームを取り外すとコンパクトに

ボディのフレームは両方とも取り外すことができ、コンパクトに運ぶことが出来ます。このフレームがスポンジで覆われているのはクッションと滑り止めを目的としていますが、フレームの共振を抑える働きもしているので、生の音はかなり小さめです。フレームのスポンジも5年や10年使うとボロボロになってくる場合もありますが、フレームもパーツとして扱っていて後からお買い求めになることができますから、心配はいりません。
ボディ側にクラシックギターのスロテッドヘッドが収められていますが、「ブリッジ側でチューニングする」というヘッドレス独特の課題に対して、現在あるもので理想的な答えを出した好例です。Sinsonidoにはベースやクラシックギター版もあります。
この大きさなので邪魔にならないし生音もかなり小さいので、入院中のミュージシャンの方が病室で練習するということもあったそうですよ。

ジプシージャズの必携アイテム「Maccaferri(マカフェリ)」

Maccaferri

──マカフェリですよ!スタンダード系ばかりでなく、消音ギターからマカフェリまで、アリアはラインナップの幅がとても広いですね。バンジョーやマンドリン、コードハープまで幅広く取り扱っているのはここだけです。マカフェリはジプシージャズのプレイヤーが持つものというイメージですが、絶妙にローが抜けていてウェスタン系のコード弾きもスッキリ聞けるんですね。

Aria コードハープは定期的に問い合わせを頂きますが、医学療法などの分野でも使われているようです。コ−ドハープはコード名を押さえると、コードの構成音だけが鳴るという仕組みになっています。
これはマカフェリスタイルの「MM-85」です。現在マカフェリはギターの中でも特殊な存在ですが、クラシックギターしかなかった時代にいきなりこんなものが生まれたので、それ以降のギターの構造を変えてしまったと言われています。とても軽い鳴り方をしますが、なぜか充分な音量があります。弦はフランスのSAVAREZ(サバレス)社のもので、マカフェリ専用弦です。タッチが柔らかいですね。
ブリッジの裏側をくり抜いて軽量化していますが、これは本物の軽やかなサウンドに近づけるために最近仕様変更したポイントです。ペグも特別ですね。軸にくびれがついています。
このモデルとさらにもう一段価格を落としたモデルがリリースされています。マカフェリを出しているところは他にもあるんですが、この価格で出しているところはなかなかありませんね。

アリアのアコギ定番:Aria Dreadnought(アリアドレッドノート)「AD-515」

Aria:AD-515

──胴が深くて力強い印象のドレッドノートですね。ガンガン弾くのにうってつけの鋭さを持った、はっきりとしたサウンドです。

Aria マーチン「D-28」でも採用されているヘッド裏の「ダイアモンドボリュート」も再現しています。Dタイプはマーチンのドレッドノートよりも深い胴になっており、ボディ幅はちょっと小さめです。
上位グレードなのでボディ外周やロゼッタのヘリンボーン、スノーフレークポジションマークなど、意匠をこらしています。トップのスプルース、サイド&バックのローズウッド共に単板で、ナットとサドルは牛骨になっています。ピックガードは同梱していますが、コレを貼るか貼らないかはオーナーさまにお任せしています。実際にピックガードを貼らない方がサウンドはいいですが、ピックでガンガン弾く人にとってはピックガードが不可欠ですね。

──いろいろ触らせていただきました。エレキギターでも近い感触でしたが、アリアのアコギは雑味を抑えた澄んだ音を持っていますね。アリアのアコギは何が好評ですか?

Aria 「エレコード(薄型のエレアコ)」の求めやすいグレードのものや、ドレッドノートシリーズのトップ単板(サイド&バック合板)モデルを入門機として買われるお客様が多いようです。定価30,000円近辺のモデルが、アリアのアコギとしては売れ線ですね。
時代ごとにブレイクする音楽、アーティストの影響も大きいですね。見た目だったり音だったり、アーティストのイメージに近いギターの人気が上がります。

──確かにエクストリームの「More than Words」、Mr.BIGの「To be with you」がブレイクしたときには世界的にアコギが売れるというシーンがありましたね。


Extreme – More Than Words
「ハードロックバンドのヴォーカルとギターによるアコースティックデュオ」の、おそらく最も成功した例。この曲におけるヌーノ・ベッテンコート氏のプレイは、アコギの歴史に刻むべき名演の一つです。

製品を作る中での、メーカーとの関わり方

──メーカーとはどのようなやり取りが行われているのでしょうか。

Aria まず、製品のアイデアからイメージを膨らませ、大まかな仕様を決定します。
それをメーカーさんに見積を依頼し、こちらのイメージや販売したい価格も含めて擦り合わせをしていきます。この時にメーカーさんから、アイデアや材についてのご提案を頂く事もありますね。

おおまかにはこういったやり取りを繰り返し、最終仕様を決定して発注をかけます。新規モデルではサンプルを依頼しますが、既存モデルの単純な色違いなどの場合ではサンプルを制作しない代わりカラーサンプルをもらうくらいにします。付き合いの長いメーカーさんだと過去に依頼したモデルの図面や経験が残っているので、ちょっとした仕様変更では毎回図面を起こさずに依頼できることもあります。生産するモデルによってはサンプルを作らなくても問題ないというメーカーさんもあれば、どんなモデルであっても必ずサンプルを作らせてくれ、というメーカーさんもありますよ。

──今だから笑える、メーカーさんとの思い出話や失敗談はありますか?

Aria 海外だとなかなか伝わらないことが多いので、相手に100%伝わっているのか不安になることがあります。中には「相手には全く違う色が見えているのではないだろうか」と考えさせられるようなことも何度かありました。相手が国内メーカーの場合では日本人同士なのでそれほど深刻なミスは起きにくく、起きたとしても充分カバーできる範囲内で済むんです。しかし、海外では物凄いことが起きます。
色が違うのは日常茶飯事で、中にはブラックで指定したギターがキャンディアップルレッドで納品されたこともありますよ。ベースの大きなヘッドにギター用の小さなロゴが貼られることもありましたね。こういう場合の多くはサンプルの制作時なので大事にはいたらないケースが多いですが、出荷直前に青ざめてストップをかけたこともありました。
現在海外のメーカーは中国、インドネシアなどのアジア圏がメインです。どこの工場にも貿易担当で英語が喋れるスタッフがいるので、やり取りは英語になります。中国には弊社の駐在員が一名おり、定期的な情報交換を繰り返しています。伝達関係は本当にちゃんとしなければならないのは当たり前ですが、ちゃんとしていても国を隔てると感覚的な部分に違いがあり、予想外の所で認識の違いが発覚して慌てることもあります。
クラシックギターをスペインで作っているのですが、スペインはのんびりとした社会で、納期に対するモチベーションが日本ほどではないし、7月8月はしっかり休みます。中国でも2月の旧正月には仕事をしないのが普通で1ヶ月間工場が止まるということもあります。こうした各国ごとの事情を汲み取りながら、納期管理や在庫管理をしています。

「どこのメーカー製」というだけの製造元表示には意味を感じていない

──ブランドとは何で、メーカーとはどう違うのでしょうか?メーカーはOEMの発注元を明かさないし、ブランドはメーカーを明かさないことが多いですよね。

Aria 「ブランド」は弊社製品のひとくくりの看板で、ひとつの「イメージ」として広めていきたいものと考えています。その中で企画部は、ブランドイメージに従った商品企画や開発を日頃の仕事としています。フェンダーやギブソン、マーチンなど世界的な大企業以外には、生産数が多い自社工場を持っているブランドはほとんどありません。
一方「メーカー」は、各ブランドが設計したものを作る「工場や工房」のことです。「フジゲン製」や「寺田製」のように、メーカーがブランド視される風潮もありますね。弊社でもグレードの高いモデルについては「イイものを作ってくれる」とこちらが判断したメーカーさんにお願いしています。昔の製品が「マツモク製」と表示されることがありますし、過去の商品に関しては弊社も製造元を明かすことがあります。
しかし僕らにとってはメーカーさんの「名前」より、メーカーさんが「こちらの考えたことに共感して仕事をしてくれるか」、これを最重要視しています。やはり国内メーカーではギターを好きな方が仕事をしていますから、僕らが考えたものの良さや情熱を感じてくれたら、より気合いを入れて作ってくれるんです。工場の職人さんは通常それぞれのセクションに分かれて作業するんですが、それぞれが「良い製品になる」と感じて仕事をしてくれた楽器は、素晴らしいものになります。またそうしてできた完成品を見ると、「凄く良いものができたな」という実感が湧きます。こうした経験から、単純に「どこのメーカー製」というだけの製造元表示には意味を感じていません。
国内メーカーで考えると、請け負うことのできる品目や価格、生産数に違いはあっても、技術的には間違いのないところばかりです。そのなかで折り合いがつくところを選んで依頼して、仕上がってきたものを検品して、弊社の商品として認めた上で販売する、ということをしています。頑なに製造元を隠し通すつもりもありませんが、わざわざ公表する必要性も感じていません。
僕も買う側なら、どこの国で作っているのかは気にします。しかし良いものを作っていることが分かれば、その国のどのメーカーなのかは気になりせん。知りたい方も一定数いるでしょうけど、反対に気にしないお客様も多くいらっしゃいます。こうした情報が拡散することのメリットよりも、メーカーさんが被るデメリットの可能性を懸念しています。
「どこの工場で作っているから良い悪い」という意見を散見しますが、ブランドがある程度の台数を依頼できる生産力のあるメーカーといったら、日本には3件か4件くらいしか残っていません。元を正せば同じ所で作っていた、なんて話は全く珍しくない、そのような状況下で「3つや4つのうちのどれだ」という情報が果たして面白いのか、と思うと疑問視せざるを得ません。逆に「どこのギターも一緒」って感覚に陥ってしまいそうで、面白くないんです。
だからこそ「ブランドの企画力」と「ブランドイメージ」が重要です。興味をそそるであろうものを開発するのがブランドで、それを実際にカタチにしてくれるのがメーカーさんです。その中でお客様の求めている価格帯があるので、品質を多少我慢しなければなりませんが、中国やインドネシアなどアジア生産のものも必要だと思っています。
弊社としてはどうしても「気軽に始められる楽器」が必要なので、「価格の幅が充実したラインナップ」を持っていたい考えです。世の中に高額なギターしかなかった時代に、初心者が気軽に始められる安いギターを開発したという歴史も弊社にはありますから、そこは外せません。

限られた予算内で最も良い選択を提案できる

──これまでのお話で「価格」に対するこだわりをひしひしと感じますが、どうしてここまでの低価格化を実現することができるんでしょうか。

Aria 製品の価格については、深いこだわりを持っています。
第一に、この仕様に変更したらいくらになるとか、いくらにするにはどうすればいいかなど、メーカーさんとの綿密な協議を重ねています。また、意外と何気ない話からアイディアが浮かんだり、メーカーさん側からいいご提案を頂いたりする事もありますので、協議とまではいかなくても、メーカーさんとのコミュニケーションを大事にしています。
第二に、パーツの仕入れを検討しています。例えば同じパーツであっても、メーカー手配の方が安いものであればお任せしますし、弊社で手配した方が安ければ、弊社で手配します。コストの計算は常にしており、少しでも原価を抑える工夫をしています。また逆に、定価に影響の出ない範囲であれば少しでもいいパーツをつけようとか、製品のぱっと見や目を引くスペックでなくても、地味な努力で製品の品質を上げようとしています。
第三に、一部のモデルについては過去に生産したモデルの寸法や仕様を引き継ぐので、新規の図面を必要としない場合もあります。
このようなことの積み重ねの結果ですが、荒井貿易は古くからやっている歴史のある会社ですから、古い付き合いのメーカーさんから信頼を頂いているのも重要なポイントだと思います。

──アリアの製品は安いけど、安っぽくありません。このバランス感覚は、いつも感心しています。

Aria 弊社製品は比較的低価格なものが多いため、「庶民の味方」や「初心者向け」のように感じている人が多いことは認めざるを得ない所です。しかし「安いから初心者向け」とか「他社よりも劣っている」と思って欲しくないというのが、正直な思いです。弊社の日本製のモデルは、他のブランドの同スペックのモデルと比べると安いと考えています。ですから同じ価格同士だったら、絶対に弊社製品の方がクオリティが高いと思います。同価格帯ならウチが最強ですし、品質だけで勝負しても負けないと思っています。
アリアやアリアプロIIは、値段以上のものをお返しできるブランドです。アリアブランドのこれからは、安いだけでなくクオリティについても好意的に感じてもらえるイメージを作っていく必要があると思っています。初心者セットに限らず、中級以上の方でも予算の制限下で楽器を買っていることを思うと、弊社ブランドは限られた予算内で最も良い選択を提案できると思いますし、そういうものを作りたいと思っています。
ギターは使用するアーティストのイメージ次第で売れたり売れなかったりもするんですが、そういったイメージを抜きにして、楽器として考えた場合、アリアはかなり優秀です。とはいえ「グレードの高い製品」のイメージが薄いので、これから知って頂きたいと思っています。貿易で取り扱っているものを含めると、弊社が扱うギターは¥9,800(レジェンドLST-Z)から¥4,000,000(ラミレス125周年モデル)までの振り幅がありますから。

──お二人は、日頃どんな仕事をしていますか?また荒井貿易創始者の荒井史郎さんとは、よくお話されますか?

Aria(瀬川) 私は写真を撮ったりサイトを更新したり、というのがメインです。カタログ写真やサイトの画像などの素材のために、撮影専用の設備を整えました。いろいろな角度から間接照明が当てられるように工夫しています。新製品はひとつずつリリースするので、まとめて業者に依頼するよりも自社でこうした作業を行う方が効率的なんです。
日頃は入荷商品の製品資料を制作して、各楽器店様にご案内したり、公式サイトを更新したりしています。企画課所属になっていますが、商品の案内をしていく商品部の企画課です。
荒井の著書は私が構成したんですが、どれだけチェックしたかわからないくらいチェックしましたね。書かれたものをチェックしたり、写真を取り込んでデータ化したりで大変でした。今でも著書を持ち込んでサインをお求めになる方が、ときどきいらっしゃいます。

ギターに魅せられて(著:荒井史郎)

ギターに魅せられて
戦後の復興期にクラシックギターと出会い、その魅力にどんどんのめりこんでいきながらギターに関する事業を次々と展開していった荒井貿易創始者、荒井史郎氏の自叙伝です。クラシックギター専門誌で連載された内容をまとめたものなのでアコギもエレキもほとんど触れられませんが、荒井氏が築いていった「戦後日本のギター史」に触れることができます。 荒井氏は譜面や楽器の取り扱いを通して戦後日本にギター文化を浸透させた功労者であり、 ・戦後発明された新素材「ナイロン」によるギター弦を、USAオーガスチン社と共同開発 ・大きく動いたネックを効率的に調整する「ネックアイロン」を発明 ・本場スペインのギターに比肩する楽器を、手工家中出阪蔵氏と共同開発 など、数々の歴史的な実績を残す、「日本のギターレジェンド」の一人です。 Aアマゾンで探す

Aria(加藤) 私の方の企画課は楽器の設計で、面白いものを探したり、図面を書いたり、仕様書を書いたりするのがメインです。サンプルを多く作ることもあって、在庫管理もやっています。あまり大きな会社でもないので、それ以外の細かなことも色々やっています。自分の本来の仕事以外でも勉強になることが多いと感じていますよ。
私は役職や業務柄なかなか荒井と接点がありませんが、バイタリティのすごさは伝わってきます。若いころですが、輸出したギターの不調を聞いて現地に飛び、そこで何百本もリペアしたという話もあります。現在荒井は相談役という役職名で、クラシック関係では最近まで中心になって統括していました。本当にクラシックギターへの情熱は凄いですね。

──新入社員には、どんな人に来てほしいですか?

Aria 弊社の社員は楽器店や同業者からのリクルート、楽器専門学校からの新卒がメインです。好きなものにかかわる仕事がしたい、という人は多くいますね。まったくの異業種からたまたま縁があって入社できたという幸運な人もいますが、最近は難しいでしょうね。人とは違う何かをしたい人が使うものを扱うビジネスですから、他の人とは違う経験を積んでいるとか、オリジナリティがあるとか、そういう人材がいいですね。バイトをやるにしてもそれが社会経験になりますし、バンドをやっていれば楽器店に頻繁に来たり新製品をチェックしたり、という習慣が役に立っているかもしれません。何をするにしても、出会ったものとの縁は大事にしておくものだなと思っています。また社名の通り貿易重要な業務なので、英語が堪能で海外とのやり取りができるといいですね。

──休日はどのように過ごしていますか?

Aria 休みの日はしっかり休みます(笑)。楽器を弾くこともありますし、遊びにも行きますし、だらだらもします。普通の会社員ですよ。

──ありがとうございました。

Aria(瀬川&加藤) ありがとうございました。


Cafe De Aria 社屋には昔ながらの喫茶店が併設されている

以上、愛知県名古屋市に本社を構える荒井貿易株式会社のお二人に、長時間にわたる取材をさせていただきました。今回の取材では「ブランドとは何か」が大きなテーマだったのですが、詳しい解説に加えてアリア製品への熱い思いも語ってもらえました。エレキギター/アコースティックギター共に、アリアのオリジナルモデルを弾くと「クリアだ」「澄んでいる」という感想を持ちました。雑味を抑えたクリアなサウンドが、アリアのギター共通の音色です。また、品質と価格とのバランスに対して非常に深いこだわりがあるのが印象的でした。楽器店でアリアを見かけたら、ぜひ手にとって価格以上のクリアなサウンドを体感してみてください。