東京・神田にある楽器店「宮地楽器神田店」。東京で一番楽器店が集まる街「御茶ノ水」からほど近くにありながら、御茶ノ水にある楽器店とはラインナップされている機材など少々趣きが異なり、特色のある楽器店となっています。今回スーパーナイス・スタッフが宮地楽器神田店・エフェクター部門の切替淳さんにインタビュー、宮地楽器のことやエフェクターのことなど色々とお話を伺いました。
──よろしくお願いします。
切替淳さん(以下、敬称略) 切替淳と申します、28歳です。よろしくお願いいたします
──切替さんは宮地楽器神田店の中でも、元々はレコーディング部門にいらっしゃったんですよね?
切替淳 はい、僕は元々DJとかサンプリングで曲を作ったりなどの作業が好きなこともあって、入社した時はデジタル系の部署、レコーディングの部門にいました。そこの部署でPro Tools、マイク、アウトボード、などの販売に携わっていました。その後異動がありエフェクターを担当することになりました。神田本社の売り場部隊は少数精鋭で、若く経験が浅い担当者にも責任を持たせてくれ、入社してすぐに仕入れに関しても任せていただけています。
──まずは、宮地楽器さんの特色についてうかがいたいと思います。
切替淳 創業は1917年ですのでそろそろ100周年を迎えます。宮地楽器の正式名称は宮地商会と言いまして、全国の楽器店に卸売をする事業が土台になっています。近年では主に音楽教室の運営に力を入れており、東京エリアに約40会場あります。武蔵小金井のショールームにはハイエンドなグランド・ピアノやヴァイオリンの展示もしています。この神田店はギターやDTM//DAWを扱うショップですが、その他、この神田本社にはプロ業界向けにレコーディング設備機器をシステム販売するプロ事業部や輸入事業部など専門的な事業部もあります。
その中でも私が勤務する本社店舗は
「お店で楽器を買う、ギターの弾き方がわからない→音楽教室、バンド練習をする→スタジオ、曲が弾けるようになった→ライブハウス(ジッパルホール)」
といったようにお客様のニーズに対してワンストップ対応できるような仕組みとなっています。したがって色々なチャンネルからお客様との出会いがあるんですね。
──音楽というジャンルの中で多岐に渡っている上に、一つ一つの掘り下げ具合が凄いですね
切替淳 各部門で「いけるところまでいってしまえ」という精神があるんでしょうね。ここ宮地楽器神田店は御茶ノ水の近くということで、御茶ノ水にはもう本当に色々な楽器や機材が集まっている。そこからウチの店はちょっと離れたところにありますので、御茶ノ水にはない/ウチにしかない面白いモノを揃えていく、という風土があると感じています。エフェクターとかレコーディング機材に拘らず、やはりいいものを置かないと、という視点がありますね。ギターに関してもリッケンバッカーやヘフナー、グレッチ・ギターなどのいわゆる「ビートルズ・ギア」が並んでいたりなど、テーマを持って尖っている。守備範囲広く品揃えをせず、突き抜けたラインナップを揃えることで独自性を保っているのかなと思います。
──宮地楽器神田店ではDAWレッスン/スクールが充実していますね
豊富な品揃えの、オーディオインターフェイスの棚
ボーカルブースが店内にある
切替淳 Cubase、Logic、Pro Tools、Ableton Live、これからはStudio Oneなど、各DAWソフトに関して、初心者向けのセミナーをやっています。ミックスダウン・レッスン、マスタリングセミナーも行っています。元々宮地楽器ではプロ向けのレコーディング機材を扱っていたということもあり、DAWレッスンやスクールもプロの方々に協力していただいて、単発で有名なエンジニアさんクリエイターさんを招いたり、お客さん達が気になっている部分をプロの方達に教えてもらう、という形態をとっています。
宮地楽器は(スタジオやライブハウスなど)場所を持っているところなので、場所を使ってお客さんとプロの方を繋ぐ、普段は音楽教室として使っている部屋に生徒さんを集めてセミナーを開いたりしています。プラス、豊富なハードウェアなど機材面で充実しているので、ハイエンドユーザー向けの有料セミナーもちょくちょくやってて、著名なエンジニアさんに来ていただいて、ドラムをレコーディングしてみよう、といったこともやっています。一般向けのレッスンから高みを目指すセミナーまで、幅広く対応できると思います。
──ドラムレコーディングはどこでするんですか?
切替淳 神田店2階のライブハウス「Zippal Hall(ジッパルホール)」を使ってレコーディングしています。そこにドラムをセットして本格的なレコーディング機器を持ちこみ、本物のエンジニアのマイキングなどを直接見ることができたりします。ボーカルのレコーディングもやりましたね。
──それは非常に勉強になりそうですね。ニーズは高いですか?
切替淳 高いですね。メーカーさんの協力と店舗からの機材提供で現場だけのノウハウを披露できる、学べるっていうのは強みだと思います。
──レコーディング機材も充実していますね
切替淳 マイクプリアンプ、卓、ソフトウェア、ハードウェア、揃えてます。今フリーソフトでDTM環境ってほぼほぼ揃うじゃないですか?そこにアナログのちょい足しを提案することがあります。そうすると「やっぱりアナログがいい」っていう声を聞けますね。ロジックのセミナーだとロジックのソフトの話だけになりますが、アナログまで含めたトータルなレコーディング・セミナーだとマイクの話とかになりますね。
──ビンテージ機材についても豊富に扱っていますね
ハードウェア・アウトボードの取り扱いも豊富
切替淳 はい。併設店のWurly’sではフェンダーローズなど70年代のエレピを中心に、シンセサイザーは70,80年代のビンテージのものから、最近のものまで揃えています。最初はエレピだけだったんですが、シンセもやろうということになり、シンセを扱っているとどうしてもこれからはモジュラーシンセだよねということになり、モジュラーシンセも扱うことになったんです。古いシンセも人気で、入ってきても2,3日で売れてしまっていますね。
ビンテージのレコーディング機材はメンテナンスにどうしても専門的な技術が必要になってきます。こういった機材の買い取りは普通のお店にもっていっても無理ですが、うちは専門の技術者がメンテナンスを対応、アフターケアなど面倒を見ることができます。
ビンテージのフェンダーローズ・ピアノから最新のアナログシンセまでが並んでいる
──それにしてもモジュラーシンセまでとは、かなり掘り下げてますね!
切替淳 はい。先日はギターのインプットとアウトプットを装備/ドライブ回路/パッチング対応というモジュラーシンセが入ってきました。モジュラーシンセをギターのエフェクターのように扱うことができるユニットです。うちの店の中でも一番アンダーグラウンドな部類の機材ですね。
切替淳 宮地楽器には輸入代理店の部門(M.I.D.)もあるんですが、それとは別にお店単位で(ディストリビューターとしてでなく)ディーラーとして外国のメーカーと直接契約をして商品を仕入れて売るというやり方をしています。日本だと言葉やメンテナンスの問題もあり、ディストリビューター(正規代理店)から小売店に卸すという流れが一般的ですが、海外ではギターショップなどのお店がメーカーに直接問い合わせて注文することも多いようです。
ただ、うちは輸入代理店部門でアウトボードやビンテージエレピなどを扱っていますので、製品の故障や修理などに関しても対応できる技術スタッフがおり、単にお店で売りたいものを仕入れてくるだけでなく、メンテナンスや保証についても責任を持ってやっています。
──海外から製品を輸入する場合、またディストリビューター(代理店)を名乗る以上、責任を果たさないとそのブランドイメージが日本で失墜してしまいますよね。
切替淳 メーカーの規模や考え方によってディストリビューション(代理店)やディーラーシップ(店との直取引)どちらが良いか?という判断は様々ですね。交渉の過程で、メーカー側からディストリビュートして欲しいという相談もたまにあるのですが、その場合は当社の輸入事業部か、あるいは他の輸入代理店さんを紹介します。このように状況に応じて二段構えで対応するようにしています。
当社がディーラーとしてメーカーと直接取引する場合は、必ずお互いに正しくこういった業態を理解することが大前提と考えていますね。ディーラーとして取引している以上はもちろんエクスクルーシブ(独占販売権)などは要求しませんから、そのメーカーの製品を日本の他のディーラーさんがお取扱いになることも可能なわけです。こういった取組みは将来的にユーザーさんや業界のためにもなるんじゃないかと思っています。
場所柄、他との差別化を図った結果、ハイエンドなレコーディング機材やビンテージ機材を扱うようになったという切替さんのお話でしたが、確かにお店にはハイエンドなハードウェア系レコーディング機材や、他では見られないビンテージ機材がズラリと並んでいました。楽器初心者からの音楽教室、レコーディング機材についてはレッスンやセミナーを、デリケートなビンテージ機材はアフターケアなど、ユーザーにしっかりと寄り添ってくれる楽器店だと感じました。
後編では切替さんのメイン業務であるエフェクターについて、お話を伺いました。エフェクター好きにとって面白い話が色々と飛び出します!!
エフェクターを選ぶ重要な要素は「どれだけ尖ってるか」宮地楽器神田店【訪問インタビュー】